純喫茶という響き
最近、純喫茶という響きにときめく。
ちょっと薄暗い照明に、使い古された木の机。
素朴でレトロなメニュー。
ある日、内野駅前を歩いていたら、純喫茶カポネというお店を見つけた。
見つけたといっても、お店自体を見つけたのは、もうずいぶん前のことになる。
ただし、日曜日がお休みのようで、営業しているところを見たことがなかったのだ。
「新潟市内の純喫茶なら、古町周辺に何軒かありそうだ」と
真っ先に思ったのだが、なぜかこちらのカポネさんが気になって仕方がなかった。
常連さんしかいないんじゃないか・・・
たばこ臭くて具合が悪くなるんじゃないか・・・
お店の方が不愛想なんじゃないか・・・
そんな勝手なイメージが、私からこのお店を遠ざけていた。
けれど、この日は純喫茶欲を抑えきれず、ひとりで入ってみることにした。
どきどきわくわくしながら、扉を開ける。
おだやかなママさん
ひとりで入ってみるとママさんに声をかけられた。
緊張していたのでなんと言われたのかは思い出せない。
お好きな席へどうぞ、と言われるが、
テーブル席には常連さんらしき紳士(おじいちゃん)が座っている。
そもそも、お店にはカウンター席とテーブルが2つしかない。
このお店で最初から正面のカウンターってのもハードルが高い、と
あれこれ考えきょろきょろしていると
紳士が「私はもう帰るから、ここもあきますよ」と声をかけてくれた。
すぐさまわたしは窓際のテーブル席に落ち着いた。
そういえば、禁煙なのか喫煙可なのか分からなかったが、たばこ臭くはない。
求めていたのはピザトースト
メニューを眺める。
ピザトースト、よし、ある。
なぜピザトーストなのかというと、
ここ数日のわたしは、
『喫茶店のピザトーストが食べたくてたまらない症候群』にかかっていたからだ。
twitterにも「ピザトーストが食べたい」とつぶやき、
気分を少しでも味わおうと、パン屋さんでピザパンを買ってみたり。
けれど、満たされることはなかった。
わたしが食べたいのは、ピザでもピザパンでもなく、ピザトーストなのだ。
そんなわけで、ピザトーストとセット珈琲を注文した。
しばらくすると、「サンドイッチみたいなものはあるかね?」と
いうおばあちゃんがやってきて、チーズトーストセットを頼んでいた。
ふたり分同時に到着し、隣同士トーストを無言で食べる。
添えられたサラダが思った以上にボリュームがあり、
シャキシャキと歯ごたえがしっかりする。新鮮で驚いた。
トーストは四等分に切り込みが入っていて食べやすいが、
チーズがたっぷりなためか、わたしの食べ方に問題があるのか、手が油でべとべとになる。
それもまたいい。
とてもおいしかった。
至福の時だった。
求めていたピザトーストがここにある。
「そう、これがわたしの求めていたピザトーストだ!」と心の中で小躍りした。
とてもおいしいのだけど、BGMの音量が小さすぎる。
これは、ひとりで食べると思いのほか音が響きそうだ。
ありがとう、サンドイッチおばあちゃん。
ぼーっとするのにもってこい
お店のママは、余計な会話はしてこない。
けれど、とても優しくおだやかな雰囲気だ。
サンドイッチおばあちゃんが先にお店を後にし、
ママさんとわたしの二人きりになった。
ママさんはカウンターに座って雑誌を読んでいる。
なので、食事を終えてからもなんとなく居心地よく過ごすことができた。
しばらくすると、これまた常連さんらしきマダムがきた。
お店に入るとママさんに話しかけるのと同時に、
店内にいたわたしにも微笑みかけてくれる、品のいいご婦人だった。
ママさんと常連さんが談笑している中、窓の外を見ながらぼーっとするわたし。
とてもせまいけれど、自由でゆるやかな時間が流れているこの空間にいることがしあわせで、
満ち足りた気持ちだった。
お会計を済ませるとき、マダムに「素敵なカバンねぇ~」とほめていただき
さらに満ち足りた気持ちでお店をあとにした。
余談だけれど、メニューの中の「軽食」というコーナーもたまらない。
たいていのカフェには、ランチタイムメニューがあったり
お食事メニューはある。
しかし、どれもがっつりご飯という感じで、時間限定なことも多い。
わたしは、夕方にカフェでちょこっとしょっぱいものが食べたいときに、困る。
お茶の時間帯には「ケーキセット」やスイーツメニューしかないからだ。
かといって、ランチタイムでがやがやした感じは少し苦手なので個人的には避けたい。
お得なのは重々承知なのだけど、カフェあるいは喫茶店のわたしの目的は、
食事を楽しむのもあるけれど、なによりその空間と時間を楽しみたいからだ。
これは、ひとりカフェがほとんどな自分だからなのかもしれないが。
スイーツは大好きだけれど、あまいものを最大限においしく
感じるためには、塩気も必要。
そう、ちょこっと食べるトーストは最高なのである。
おしゃれなカフェのメニューも好きだが、この文化はなくならないでほしい。
ピザトーストをまた食べにきたい。
そして、今度はクリームソーダも飲んでみたい。
おいしいピザトーストと、ゆるやかな時間ありがとうございました(●ˆᴗˆ●)