落ち着く喫茶店、というのは案外ないものだ。
静かな喫茶店(決しておしゃれなカフェではない)で、読書がしたくなり、新潟市西区小針十字路近くの「自家焙煎珈琲こもろ」さんに入ってみた。
西大通り沿いを通るたびに、その存在が気になっていたが、入ることはなかったお店。
なんだかこの地で昔から営業している、静かな喫茶店のイメージだった。けれど、ネットで情報を探しても中々有力な情報にたどり着けない。長野にある姉妹店?の方はお店のホームページがあるのに。
百聞は一見に如かず。わたしがこの目でみて感じるしかない。
外から中の様子はうかがえないので、少し不安になるが、その扉を開く。
入ってみると、白髪の穏やかそうなマスターが「いらっしゃいませ」と言ってくれ、ガチガチに力が入っていた自分の身体をゆるめてほっとすることができた。口コミ情報による、「感じのいい老夫婦がやっている喫茶店」という表現は、とても適切だった。
それでもなお緊張は続いていて、自分の席に着くまで気持ちが落ち着かないが、記憶にある限り先客は一組。奥の席で談笑していた。
こちらのお店、思ったよりも座席数が少ない。
一軒家の喫茶店なので、勝手にもう少し広いイメージだった。
珈琲を淹れているママさんの目の前のカウンター席と、テーブル席が3席ほどか。
わたしは入口近くの小さなテーブル席を選び、向かい側の椅子にカバンを置き、入口のドアに背を向けるようにして腰かけた。
出迎えてくれたおじいちゃんのマスターがホール係で、珈琲を淹れているのが、これまた笑顔の優しいおばあちゃんのママ、という少し意外な役割分担。
メニューはいたってシンプルで、珈琲とジュースくらいしかない。ブレンドについての説明書きが、達筆すぎてよく読めなかったので、店名が入っている、「こもろブレンド」にした。
オーダーしてから、「苦い珈琲は苦手だし、そもそも苦味という味覚がいまだ発達していないので、苦味の少ないスウィートブレンドにすればよかったかな」と一瞬後悔する。
とても素敵なカップ。
わたしの好みを知っているのかなと思うくらい。
かばんもバラ柄なくらい、わたしはバラがとてもすきなのだ。
ふちどりされている、紫がかったピンクも愛らしい。
数あるコーヒーカップから、ママさんがわたしをイメージして選んでくれたと思うと、心がじんわりあったかくなる。
先ほど、「スウィートブレンドにしたらよかったな」と若干思ったけれど、こもろブレンドがとても飲みやすくてびっくりした。
苦味もそこまでなくて、すっきりとさわやかな飲み物だった。珈琲を飲むとたいてい胃腸にダメージをくらうのだが、珍しく胃もたれもしなかった。けれど、違いが気になるので次回はスウィートブレンドを飲んでみたいと思う。
しばらく読書をしたのち、ケーキも頼んでしまった。
他のお客さんが注文して、マスターが運んできたケーキがチーズケーキだったから。
何を隠そう、わたしはチーズケーキ大好き人間なのだ。
(別に隠してはいないが)
手作りなのかどうかは確認できなかったけれど、あっさりとした、とても素朴なチーズケーキだった。個人的には濃厚さが足りなかったけれど。
読書はそこそこはかどったのだが、マスターの声がおだやかでかわいくて心地よくて気になりすぎてしまった。
固かった心がほぐれる。癖になりそうだ。
「あじさいはそろそろ、切り落とさなきゃねぇ」とマスターの優しい声がする。
このお店の周りには、地味だけど丁寧に育てられたらしいことを感じさせる草花たちがそっと咲いており、癒される。
今日はあいにくの曇り空だったけれど、奥の窓からは緑色に茂った木々のカーテンがゆらゆら揺れていて、気持ちがよかった。
珈琲豆の量り売りもしているらしい。
豆を購入しにくるご近所さんのような方もいた。
気が付けばほどよい感じに雑音が混じる。
あとからやってきた、常連さんらしいマダムも、カウンターでママさんとおしゃべりに花を咲かせていた。あまりにも静かすぎても落ち着かないのでちょうどいい。
わたしはというと、「ごゆっくりどうぞ」というお言葉に甘えて、お客が自分だけになったあとも、ゆっくり本を読ませていただきました。マスターがお客さん用の椅子に足をのばして、そのやわらかい声でママさんと話しているだけで、心の中がぽかぽかしていくのを感じていた。
ふぅ。とてもいい時間を過ごせた気がする。
はじめに話した通り、お店を切り盛りされているマスターとママさんは、ご高齢にみえた。こういうお店が少なくなってきた今、末永く続いてほしいと心から思う喫茶店である。
素敵な読書時間をありがとうございました(●ˆᴗˆ●)
【自家焙煎珈琲こもろさん】
営業時間:10:00から17:00
定休日:金曜日